2024年に考える宗教二世を取り巻く問題

宗教二世とは何か

2022年の安倍元総理銃撃事件を受け、旧統一教会などの宗教団体に関連する問題が日本社会で大きく注目されるようになりましたが、一年も経つと報道量は減少、徐々に世間の関心が低下していることを肌で感じています。

この問題に対しては持続的に声を上げる必要があるため、改めてこれまでの発信を総括した宗教問題について記載します。

宗教問題の中でも特に議論が必要であると考えるのが、いわゆる「宗教二世」が直面する数々の苦難です。
※宗教二世とは、親の信仰のもとで育てられ、幼少期からその宗教的な価値観や教義に従うことを強制されてきた人々のことを指します

子どもたちは等しく「信教の自由」という基本的な人権を生まれた瞬間から否定され、自分の意志や価値観が親の宗教に支配される生活を余儀なくされます。
本来、信教の自由は一人ひとりが持つべき権利ですが、宗教二世たちにはその権利が認められていない現実があり、こうした環境で育つことによる苦悩や孤独感は交友関係にも歪みを生み出し、成長過程において深刻な影響を及ぼし、自己形成の段階で大きな壁となって立ちはだかります。

親の宗教強制による子どもへの圧力【旧統一教会とエホバの証人の事例】

旧統一教会の二世信者は多くの場合、親の信仰や教団の方針に従わなければならないという強いプレッシャーにさらされています。親は子どもに教義に基づいた行動を制限し、日常生活の中でも宗教的な行事や儀式、さらには金銭的な献金などに参加することを強制することがあります。

たとえば、「信者の義務」として家族ぐるみの大規模な献金や、特定の教会活動への参加が二世信者にとっても避けられない状況がつくられ、結果的に彼らの生活が宗教の枠に制限されることとなり、社会との交流に大きな制限が設けられてしまいます。

こうした問題は旧統一教会だけに限りません。他の宗教団体、たとえばエホバの証人においても、子どもに対する信仰の強要が行われることが少なくないとされています。エホバの証人では、子どもに対するムチ打ちや、クリスマスや誕生日を祝うことが禁じられたり、医療行為の拒否が教義として存在したりと、子どもたちが宗教の規則により生活面での制限を受けることが多く存在します。

こうした宗教による規制の中で子どもたちは個々の意志や願望が抑圧され、結果として自己決定権が失われてしまうことは想像に難くありません。

信教の自由とは何のための権利なのか?

この問題が浮き彫りにするのは、信教の自由とは本来何のための権利なのかという根本的な問いです。

信教の自由は個人が自らの意思で信仰を選び、精神的な豊かさを得るためのものであり、親の宗教的信念を子どもに強制するための道具ではありません。しかしながら、宗教二世として育つ人々にとっては、自分の信仰を自由に選ぶ権利が阻まれており、その結果、成長してからも信仰に対する自分自身の意思や考えを持つことが難しくなっています。

さらに、信教の自由を奪われたことによって、成長過程で自己肯定感を持ちづらくなったり、社会に出てからも「自分は何を信じるべきか」「どんな価値観を大切にするべきか」という根本的な悩みを抱え続けるケースも少なくありません。この信教の自由の問題が彼らにとっての長期的な心の重荷となり、その後の人生にも大きな影響を及ぼすことで、親や教団の影響から自由になったとしても、自分の価値観や信念を見つけるために苦しみながら模索を続ける人々が多いのは、この問題がいかに深刻で根深いものであるかを物語っています。

宗教二世の子どもたちに「選ぶ自由」を

旧統一教会やエホバの証人をはじめとする宗教団体が引き起こす宗教二世問題は、親が信仰に基づいて子どもを育てる権利と子どもが自らの信仰や価値観を選び取る自由との狭間にある複雑な課題です。

しかし、子どもがどの宗教を信じるか、あるいは信じないかを選ぶ権利は、子ども自身に等しく与えられるべき基本的な権利であり、親や宗教団体がその権利を奪うべきではありません。

この問題を解決するためには、まず社会全体が宗教二世の苦しみに対する理解を深めることが重要です。宗教団体や教育機関、福祉機関、そして法的な枠組みが連携し、子どもが信仰を自由に選べる環境を整備することが求められます。たとえば、学校や家庭外の支援機関でのカウンセリングや相談窓口の充実、また親が子どもに信仰を強制しないためのガイドラインの策定など、実際に機能する支援体制を構築していく必要があるでしょう。

信教の自由が全ての人々に等しく保障され、子どもたちが自らの価値観や信仰を自由に選べる社会の実現を目指すため、報道が過疎化しつつある今だからこそ、日本人一人ひとりがこの問題に対する理解と共感を深め、声を上げることが不可欠です。

このブログを通して宗教二世として苦しむ人々への理解を広げ、次世代の子どもたちが自由と尊厳をもって生きられる社会づくりへの一助となることを願っています。

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