宗教トラブル解決に向けて本気で考えて出た悩み
目次
本当の敵は誰かを見誤らないこと
旧統一教会の問題噴出をきっかけに、日本中で宗教トラブルに関する様々な議論が生まれています。
今回の出来事はあまりにも問題が多岐に及ぶこと、また政治家の不祥事にも繋がりかねない一件のため、議論が方々に飛び交い、徐々に本来進むべきレールから外れてきてしまっているのではないか、そのような不安を覚えます。
何か問題を取り扱う時には敵がいると盛り上がります。会社でも政治でも。
特に問題がそのコミュニティにおいての権力者による不正だったりすると勧善懲悪の構図が完成するため、ますます「敵を倒す」ことにドラマが生まれます。
では今回の問題において、本当の敵は何かといえば「宗教トラブルを生み出している仕組み」と「その仕組みを生み出し継続している人たち」であるとボクは考えています。
ここで注意しなくてはいけないのは旧統一教会が悪だ、宗教が悪だという直球の議論も危険です。
問題点を精査をせずに大枠で毒もそれ以外の部分も一緒くたに切り落とそうとすると、毒以外の部分を取り上げて「毒でもない部分まで排除するのはけしからん!」という反対派の方々に反論材料を提供することになってしまうからです。
ぶっちゃけ今メディアで叩かれている政治家たちは本当の敵と比べたら(ストーリー上は)脇役なのに、世論的にはシンボリックな悪役(潜在的に)に置き換えられており、叩けば叩くほど世論は盛り上がってしまう問題が勃発。
これはなにも旧統一教会と関係のあった政治家を叩くなと言っているわけではなく、「政治家叩きを目的とすることは危険」といった話です。
本来の目的は「宗教トラブルを生み出す仕組みの是正」と「その仕組みを生み出し継続している人たちの処罰」です。そこに紐づく政治家は副次的な問題としてとらえなくては、いつしか最終的な目的が「旧統一教会と繋がりのあった政治家の辞職」にすげ変わってしまいます。
それで喜ぶのは誰か?旧統一教会と野党だけです。
今まさに支援を求めている宗教トラブルによる被害者は誰も喜びません。
と、前置きが長くなりましたが、本来の目的を解消するためにも、この記事では改めて問題点の整理と考えうる対策について書いていきたいと思います。
まずは問題点の抽出から
現在認識されている宗教トラブルは主に以下の三点に振り分けられます。
- 高額献金
- 霊感商法
- 宗教二世
ではこれらの問題点はどのようなものか、改めておさらいの意味も兼ねて確認していきましょう。
高額献金
そもそも「献金」とは何か。大辞泉で調べてみると、「ある目的に役立ててもらうように、金銭を献上すること」と書かれています。このことからも宗教団体に対する献金とは「宗教活動の目的に役立ててもらうための金銭の献上」という事が分かります。
お金持ちをたくさん持っている人が高額の献金をすることが高額献金と呼ばれるようになるかと言えば若干ニュアンスが異なり、ここで指す高額献金とは「自身や周りの生活に悪影響を及ぼすほどの過度な献金」といった、いわゆる相対的な意味を持った「高額」となります。
霊感商法
続いて霊感商法。これは「霊感があるかのように振舞って、先祖の因縁や霊の祟り、悪いカルマがあるなどの話を用いて不安を煽り、印鑑・数珠・多宝塔などの商品を法外な値段で売ったり、不当に高額な金銭などを取る商法である。警視庁などでは悪徳商法の一種として定義している。」wikipediaより引用
上記にあるように、要するに「霊感という要素を用いて人を騙してお金を集める行為」を霊感商法と指し、警視庁では霊感商法は悪質商法のひとつに該当すると明確に定義しています。※警視庁ホームページにて悪質商法の一例に霊感商法を記載
宗教二世
宗教二世とは、特定の信仰を持つ親(一世)の元で、信教の影響を受けて育った子ども世代のことを指します。
では宗教二世ならば全員が一世と同じ信仰を持つかというとそうでもなく、親が子どもに信教や宗教活動を一切の強要しないというケースもあり、宗教二世という言葉の定義はまだ明確ではない点もあります。
それらを踏まえて、多くの宗教二世が抱える様々な問題を一部抜粋して箇条書きにします。
- 生まれながらに信教を強制される
- 宗教活動(集会や布教活動)の強制
- 脱会をする、もしくは脱会を望むことで起きるネグレクト(親子関係の断絶)
- 身体的虐待
- 人間関係の制限(友人や恋人)
- 学校行事への参加の制限 等々
宗教二世そのものが広義な意味合いを持つため、宗教二世の抱える問題は高額献金や霊感商法と比べても幅広く、一言で説明するのはとても不可能です。
同時に対象者が子どもとなるため、解決に向けての支援策も、被害者(宗教二世)が自ら取りに行くことを前提としにくい構図も課題のひとつではないでしょうか。
問題に対するアプローチ
まずそれぞれの問題に対して行うべきは分割したアプローチです。
一部の意見には反セクト法のようにすべての問題を包括して解決できる制度設計を望む声があり、ボクも最終的なゴールは同じものを見ています。
しかし、政治が宗教トラブルに介入することを是としない政治家がいるのも事実であり、包括する枠組みが大きくなればなるほど重箱の隅をつくような反対意見が噴出し、議論に長期間を要した結果、骨抜きの制度となることは政治の世界では往々にして存在します。
そこで必要とされるのが、問題に対するアプローチを分割化することです。
日本版反セクト法の成立を長期的アプローチとするならば、短期的&中期的なアプローチを同時並行で行うことで、効果は限定的ではあるが早期的な支援体制を作ることができます。
こちらが長期的アプローチのイメージ図です。
7xの時点で制度がすべての問題を包括する対応策(例えば日本版反セクト法)が構築すれば、その後は常に4yまでを対象とした人々が制度による支援を受けることができます。
そしてこちらが分割的アプローチのイメージ図です。
長期的アプローチに対する議論と並行して短期、中期的アプローチを議論、制度構築を行うことで、対象者は長期的アプローチのみの場合と比べて、プラスして短期的・中期的アプローチ対象の人々(3x×2y+3x×3y)に対して支援策を届けることが可能となります。
このことからも日本版反セクト法の議論(長期的アプローチ)も重要ですが、その議論だけに目を奪われるのではなく、同時並行に今まさに宗教トラブルで苦しんでいる人々に対して短期的・中期的アプローチでスピード感ある支援策を講じるべきであると考えます。
現行制度でどこまで対応できるのか
各種対策の中には新制度の構築以外にも既存の制度でもある程度対応できるものもあります。
ではなぜそれらの制度があるにもかかわらず今回のような問題が噴出したのでしょうか。
これは憶測、または政治の中にある「空気」のようなものであり、確実にこれだと限定できる要因はありませんが、ボクが感じるのは「政治と宗教の距離感」が一つの大きな要因であると考えています。
というのも、旧統一教会と自民党の関係、そしてそれに起因する問題について、多くの政治家は噂程度ではあるが耳にしたことがあるのではないかと感じています。
しかし、政治の中には「宗教に介入してはいけないのではないか」という空気感があり、十分な調査研究が行われてこなかった。それにより先送りにされてきた問題が今回のような結果を生み出したものと考えています。
そこで、改めて宗教トラブルに対して現行制度では何ができるのかを整理してみましょう。
高額献金対策
高額献金の問題。ここで指す「高額」の定義は様々です。
一般的な解釈のもと、小学生なら500円でも高額ですが社会人であれば高額とは言えないでしょう。
その為、高額献金の問題は「献金」という言葉の取り扱いが重要なポイントとなります。
献金や寄付は現行制度上、返還請求ができません。(民法550条)
一般的に寄付金は控除を受けることが多いのですが、宗教法人の場合は指定寄付金に該当するのは所有する国宝または重要文化財保護のための修理、防災施設設置の費用に充当する場合に限ります。
逆に言えば、上記の名目で募った寄付金(献金)で、かつその用途に虚偽があれば返還請求を行える可能性もありますが、その際には寄付を行った際の領収書等が必要となるなど、既存制度で高額献金の問題に対応するには多数のハードルが設けられております。
その為、高額献金問題の抜本的な解決には消費者契約法改正で契約の解除規定などを盛り込む必要があります。
その他にも寄付金の上限を設けるなどの議論も出ておりますが、上記の指定寄付金以外のものまで帳簿簿記義務が生じるため、対象は元旦のお賽銭まで広がりかねません。これらの線引きをどこに設けるのか、議論に時間が要することが想定されます。
霊感商法対策
これは先述したように警視庁でもその実態は悪質商法であると認定しており、相談ホットラインまで開設しています。それほど明確な犯罪行為として国として認識しているということです。
平成30年、「消費者契約法」の法改正により霊感商法が規制対象となりました。<消費者契約法第4条3項6>
これにより、クーリングオフ後であっても、「霊感商法であることに気付いたときから1年間、または契約締結から5年間」であれば現行制度で契約の取り消しを求めることが可能となっています。
契約取り消し条件には契約締結からの期間が設けられてはいますが、旧統一教会に限らず霊感商法のトラブルは「消費者ホットライン(局番なしの188)」で対応してくれますので、「もしかしたら」と思ったら勇気を出して早めの相談しましょう。
抜本的な解決策としては高額献金と同じく消費者契約法を用いて、契約締結からの5年ルールを伸ばすなどの対策は救済の枠を広げることが期待されます。
宗教二世の抱える問題への対策
宗教二世の抱える問題は多岐に及びます。
それらの問題を大きく分類分けすると以下の通りです。
- 児童虐待
- 信教の自由の剥奪
- 教育を受けさせる義務の放棄
ひとつづつ整理しましょう。
児童虐待
ある宗教では子どもをムチで叩くことを教義のひとつとしていました。
しかし、1994年のせっかん死事件をもとに社会的批判が噴出、今ではその教義は削除されています。
では、教義から削除されたことで組織内での身体的虐待が無くなったのかと言えばそうではありません。当時と比べれば数は少なくはなっているようですが、過去には「それが絶対的に正しい行為である」と教えられてきた信者からしてみれば、字面には記載なくとも今なお「子どもには叩いて教える」という教義は意識下において伝道されています。
その他にも宗教活動を拒否する、または退会を求める子どもに対して、家族の縁を切ることを求める宗教もあります。それによって子どもは親と口をきけない、面倒も見てもらえないという事案が発生します。これはネグレクト(育児放棄)に該当する紛れもない児童虐待です。
この二点においては児童虐待防止法で対処可能な問題であり、児童相談所や警察の介入が行われることで制度上は救済が可能となっています。
信教の自由の剥奪
これは非常にセンシティブな問題です。
宗教二世は生まれながらに一世の信仰する宗教を信教することを強制されます。
これは子どもから他の信教、または何も信教しないという選択肢を奪い取る行為になります。
派生する問題として、強制された信教の宗教活動(集会や布教活動)により子どもの学びやコミュニティを育む時間までが奪われてしまいます。
ボクはむやみやたらに子どもの人権を主張することは好きではありません。というのも判断力の育ち切っていない子どもには時として強制力を持って指導する必要もあるからです。(タバコはダメだよ、夜遊びはダメだよ等など)
しかし、信教と言う一世にとっての主観で良し悪しを押し付ける行為、信教の強制は憲法20条【信教の自由】を害する行為として対処をすべき問題です。
教育を受けさせる義務の放棄
学校は子どもの教育に必要なカリキュラムを組み立て実施しています。
それは座学だけではなく、体育や修学旅行等のイベントを通して知識や経験、コミュニケーションを育みます。
そのようなカリキュラムよりも信教を重視することで各種イベントに参加をさせない教えがあります。
この問題は学校側が「社会が教育を受けさせる義務を果たすか」、または「個人の信教の自由を順守するか」の二択を迫られます。
でも本当にその信教は本人(宗教二世)が望んでいるのか?この疑問をクリアにしたうえで誤ることない選択肢を選びとならなくてはいけません。
現行制度としては、学校に配置されているスクールカウンセラー等への相談が受け皿となっています。
そうは言っても、、、
宗教二世が抱える問題に対する対策も憲法や法律を駆使すれば大半が改善されます。そうです、憲法や法律を駆使すればです。
では、子どもが憲法や法律を理解できるか?
その悩みをどこに相談すればよいか分かるのか?
既存の制度で対応可能だとしても、子どもから声をあげることを期待するのは行政としての怠慢です。
子どもに対する支援は「待ち」ではなく「取りに行く」という姿勢が重要です。
「子どもにも広く相談窓口を設置しています。だから支援体制は万端です!」これはポーズ以外の何物でもありません。
宗教二世の抱える問題に対して社会が持つべきものは想像力です。自分をその子どもの立場だったらどのような支援を求めるかをもっと本気で考えなくてはいけません。
いじめや児童虐待などの問題も、子どもは自分から声をあげられないケースが往々にしてあります。その問題が起こす微妙な変化を察知して社会全体が子どもに対して支援の手を差し伸べる責任があります。
更に問題はそれだけではありません。
宗教二世が抱える問題として、子どもが支援を求めた際にできる唯一の対処法が「親からの一時引き離し」ということです。
親(一世)を説得して「子どもに宗教活動をさせるのはやめましょう」と言っても、熱心な信者こそそれが正しい行為と信じている以上は簡単には納得をせず、信教の強要や宗教活動の強制、それにより発生する児童虐待行為は親が脱会などをしない限りは子どもが家庭に身を置いている以上は回避することはほぼほぼ不可能です。
そのことからも「宗教二世の問題解消」には「親からの一時引き離し」という最終手段が最初の一手となります。
これは受け皿となる施設のキャパの問題もありますが、「親と離れるくらいなら宗教活動に従事すること」を望む子どもも一定する存在することを理解しなくてはいけませんが、その匙加減は子どもが強制されていればされているほど表に出にくい問題という事も忘れてはいけません。
このことからも長期的な対応となる日本版反セクト法を制定するなど、親に対しても一定の強制力を持って規制を掛けなくては宗教二世の問題解決には至ることはありません。
まとめ
高額献金、霊感商法に関しては現行制度で一定の対応が可能であり、よりきめ細やかな対応には法整備が必要となりますが、宗教二世の問題に関しては現行制度でその大半が対応可能です。
これは言い方を変えると現行制度で対応できるはずなのに問題は他と比べて多岐に渡り、なお解決の糸口が見えないのが宗教二世の問題ということです。
今、国会では様々な議論が行われていますが、宗教二世の問題に対してだけは具体的な対策が講じられていません。
ボクはこの問題に対して、宗教法人法で18歳未満は宗教活動の制限を掛けるべきと考えます。この考えに対して「信教の自由を侵すのではないか」という意見もありますが、日本人は憲法第十四条にて政治的差別を受けないとされながらも公職選挙法では18歳未満の選挙運動を禁止されています。
※公職選挙法 第百三十七条の二 年齢満十八年未満の者は、選挙運動をすることができない。
この事からも信教の自由を保持しながらも宗教活動への年齢的規制は憲法違反にならない、、、と考えています。これは司法で白黒つけるモノなので断言はできませんが。
しかし、罰則の対象を親(一世)だけではなく、活動に従事させた宗教組織まで広げることができれば、これまでのような「家庭内の問題」で問題を収束させることはできません。このポイントがこれまでの児童虐待対策と大きく異なる点であり、宗教二世が抱える問題解決の糸口であると考えます。
今回の一連の問題は法律のみならず憲法、そして地方自治体の持つ児相などの組織までもが同じ方向を向いて問題解決に取り組まなくてはいけません。
もちろん市区町村も部外者ではありません。
子どもたちに一番近くで接している大人と言えば学校の先生です。
その先生たちが子どもたちの些細な変化を察知、適切な対応がとれるように、地方議員としてよりベストに近い対策を講じてまいります。
明ヶ戸亮太(あけど亮太):経営者×川越市議会議員
現在41歳:川越市議会議員(現在三期目)・広告会社代表取締役・ICTコンサルタント・ファイナンシャルプランナー / JAPAN MENSA会員 / フィジーカー(APF大会、アスリートモデル部門優勝)
マルチタスク・ラボ
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著書:マルチタスク思考
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※川越市のプロフィール(川越市HPより抜粋)
川越市は、埼玉県の中央部よりやや南部、武蔵野台地の東北端に位置し、109.13平方キロメートルの面積と35万人を超える人口を有する都市です。
遠く古代より交通の要衝、入間地域の政治の中心として発展してきた川越は、平安時代には桓武平氏の流れをくむ武蔵武士の河越氏が館を構え勢力を伸ばしました。室町時代には、河越城を築城した太田道真・道灌父子の活躍により、扇谷上杉氏(おうぎがやつうえすぎし)が関東での政治・経済・文化の一端を担うとともに、河越の繁栄を築きました。江戸時代には江戸の北の守りとともに舟運を利用した物資の集積地として重要視されました。
大正11年には埼玉県内で初めて市制を施行し、昭和30年には隣接する9村を合併し現在の市域となり、平成15年には埼玉県内で初めて中核市に移行しました。
川越市は、都心から30キロメートルの首都圏に位置するベッドタウンでありながら、商品作物などを生産する近郊農業、交通の利便性を生かした流通業、伝統に培われた商工業、豊かな歴史と文化を資源とする観光など、充実した都市機能を有しています。現在も、埼玉県南西部地域の中心都市として発展を続けています。
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