社会の中に根深く存在する所得格差。今の日本が抱える課題の中でも特に大きな問題ともいえます。
この格差がもたらす不平等は単に経済的な問題にとどまらず、社会的な分断や世代間の機会格差、そして経済の停滞へとつながります。
今回の記事では、この課題に対してベーシックインカム(以下、BI)は「格差是正」という観点から極めて有効な解決策となるということ、そしてBIが格差是正に特化してどのような効果を発揮するのかを解説します。
格差の拡大が社会にもたらす危機
日本における格差の拡大は「年収」や「資産額」の違いという単純な数字以上の影響を我々の生活にもたらしています。
- 社会的分断の進行
所得格差が拡大すると、異なる所得層同士、所謂お金を持たない層と持つ層の相互理解が薄れ、社会全体が分断されていきます。これは「貧困層 vs 富裕層」という構図を強め、政治的な不安定や社会的な不満の増加を引き起こします。 - 機会の不平等と格差の世代間固定化
所得格差は教育やキャリア形成の機会に大きな影響を及ぼします。例えば、低所得層の家庭では子どもが進学を断念したり、安価な教育環境を選ばざるを得ない状況が増えます。この結果、格差が次世代にも引き継がれ、「経済的成功が親の収入に依存する社会」が固定化されます。 - 経済成長の鈍化
格差が広がると消費の中心である中間層が弱体化、お金の流れが鈍化することで経済全体の需要が低下します。この状況によって経済成長率が失速し、長期的な停滞を招きます。
ベーシックインカムが実現する格差是正のメカニズム
BIは無条件かつ一律で現金を支給する仕組みを持つ政策です。このシンプルさが格差是正において非常に強力な武器となります。以下にそのメカニズムを記載します。
- 所得再分配の直接的効果
BIの特徴はすべての国民に同額を支給する点です。しかし、財源を累進課税で賄うことで、富裕層が支給額以上の増税負担を担う形となり、実質的に低所得層への所得移転が行われます。具体例として、年収200万円の人が年間120万円(例)のBIを受け取る場合、可処分所得は320万円に増加。一方で、年収1,000万円の人は増税により実質的な所得が減少するため、所得格差は縮小します。 - 機会を広げる「経済的安全ネット」
BIが導入されると生活費の心配が軽減され、子どもへの教育や自身のスキルアップのための自己投資が可能になります。特に、これまで経済的理由で進学や転職を諦めていた人々にとって、新たなキャリアや自己実現への選択肢が広がります。 - 経済へのプラス効果
BIによる所得向上は低所得層の購買力を高めます。これにより生活必需品やサービスへの消費が活発化し、地域経済や中小企業の活性化につながります。この循環が全体的な経済成長を促進します。
福祉向上と格差是正、BIの真価はどこにあるのか
従来の福祉政策は、失業保険や生活保護といった「必要な人だけ」に支給する仕組みを基本としています。一見、効率的に見えるこの方法ですが、対象者の選定や申請の煩雑さが原因で、本来支援を受けるべき人々を取りこぼしてしまう問題があります。
一方で、BIは無条件で一律に支給されるため、支援を必要とするすべての人に届きます。これが福祉向上としてのBIの意義です。しかし、BIの本質的な強みは福祉向上にとどまらず、「格差是正」にあります。累進課税を通じた財源確保と所得再分配を組み合わせることで、富裕層から低所得層への富の流れを作り出して社会全体のバランスを調整します。
格差是正のためのBIの真価
BIは単なる福祉政策ではなく、社会の歪みを根本から修正するための大胆な手段です。
すべての人に平等に支給される一方で、累進課税を活用した財源確保により所得格差を強制的に縮小します。これにより、格差固定化を打破し、福祉の面からの社会的包摂と格差是正による経済的成長を同時に実現することが期待されています。
今、日本が求められているのは、従来の枠に囚われずに新しい視点で格差という課題に取り組むことです。
人口は減り続け、経済も停滞する日本。この現状を打破するための起爆剤としてBIには期待をしています。