LGBTを理解していない政治家たち
LGBTばかりになると足立区が滅ぶ?
東京都足立区の自民党議員による差別発言が波紋を呼んでいます。
過去にも国会議員が「LGBTは生産性が無い」などの発言をして、各メディアで大々的に取り上げられました。
これらの発言のどこに問題があるのでしょうか?
そもそもLGBTとは何なのか?
近年、LGBTの理解を広めようといった活動も活発になり、皆さんもその言葉は聞いたことがあるかと思います。
しかし、政治家ですらまだその程度の認識では、LGBTに対する社会的理解はまだまだ行き届かないでしょう。
LGBTを知ることは当事者のためだけではありません。
周囲のボクらもLGBTを理解することでコミュニティの輪を広げることができるし、より広い価値観を身に付けることができます。
そこでこの記事では「LGBT=同性愛者=生産性がない」といった誤った考えに対する反論と共にLGBTの正しい認識を伝えていきます。
LGBT=同性愛者?
このような認識が広まっているのは事実です。
しかし実際にはLGBTの定義はイコールで括れるような単純なものではありません。
そもそもLGBTは性的少数者の総称ですので、様々なタイプの性的少数者が存在します。
その中では同性愛者もいれば異性を愛する性的少数者もいます。
そのことからもLGBT=同性愛者というのは誤った認識であることがわかります。
そこで改めてLGBTの言葉の意味を確認してみましょう。
LGBTの4文字は、次のことばの頭文字が由来となっています。
- レズビアンは女性同性愛者、身体の性は女性で心の性も女性、恋愛対象は女性になります。
- ゲイは男性同性愛者、身体の性は男性で心の性も男性、恋愛対象は男性になります。
- バイセクシュアルは両性愛者、身体の性が男性女性問わず、恋愛対象が男性にも女性にも向いています。
- トランスジェンダーは性別越境者、「身体の性は男性でも心の性は女性」というように、「身体の性」と「心の性」が一致しないため「身体の性」に違和感を持つ人。
その他にも、インターセックス(I)=性分化疾患。アセクシュアル(A)=無性愛者。クエスチョニング(Q)=自分の性別や性的指向に確信がもてない。などの性的少数者がいます。
LGBT=性的少数者
繰り返しになりますが、LGBT=同性愛者ではありません。
L・Gについては同性愛者ですが、B・Tは同性愛者に限定した呼称ではありません。
しかし、性的多数者(異性愛者)と比べれば子どもを産み育てる機会は圧倒的に少なくなるでしょう。
それを指して生産性が無いといった発言が出てきたことが想定されます。
ではLGBTの方は全国にどれほどいるのでしょうか。
株式会社LGBT総合研究所が、全国の10万名を対象に実施したスクリーニング調査の結果では、LGBTに該当する人は約5.9%(レズビアン:1.70%、ゲイ:1.94%、バイセクシャル:1.74%、トランスジェンダー:0.47%)、またLGBTにあてはまらないその他のセクシャルマイノリティに該当する人は約 2.1%の計8%といった数字が示されました。
総務省統計局の令和2年9月の数字を見ると日本の人口は1億2581万人。内8%で約1000万人がLGBTとなります。
なるほど!確かに1000万人ものカップルが子どもを産めない環境にあるというのは今後の出生率にも少なからず影響は出てくるかもしれませんね。LGBTを批判する政治家はこの数字を考えているのかもしれません。
でも本当に子どもを産めない環境と言うのはLGBTに限定すべきでしょうか。。。?
続いて全国の生涯未婚率を見てみましょう。
厚生労働省の研究機関である国立社会保障・人口問題研究所が生涯未婚率を公表しておりますが、2015年時点でのデータでは男性が23.37%、女性が14.06%となっています。男女人口比率を半々で計算してみると、
1億2581万÷2=6290万
6290万の23.27%=1463万(男性生涯未婚者)
6290万の14.06%=884万(女性生涯未婚者)
人数でいえば圧倒的に上回る数字です。
子どもが産めないという点を懸念するのであればこの数字は見過ごしていい数字ではありません。
生涯未婚の理由には仕事や地域、賃金など様々な要因が含まれています。
出生率だけを題材に語るのであれば、その影響をLGBTだけ切り抜き議論するのではなく、地域差や働き方、労働賃金などとセットに議論をしなくては片面だけの議論となります。その結果から導かれた答えはまったく意味のないものとなります。
政治がLGBTを批判できないわけ
冒頭、政治家によるLGBTへの批判的な発言を取り上げました。
端的に言ってしまえば「LBGTは同性愛者だから子どもが産めない、だから少子化が加速する」といった主旨でしょう。
先述した通り、出生率の低下は様々な要因をはらんでいます。
- 女性の社会進出
- 若者の低所得による結婚への不安
- 地域の子育て力の低下
- 社会保障制度への不安などなど
- 子どもを産みたくても産めない家庭
これだけの要因がある中で、LGBTだけを取り上げ「LGBTは出生率の低下を引き起こす!」って言ってしまうということは、他の政治的課題に目を瞑っている、要するに臭いものに蓋をして、LGBTというまだ国民の理解が進んでいない分野にコッソリ責任を押し付けているようなものです。
仮に政治家がLGBTを批判するならば上記の出世率低下の要因をすべて解消してからにしなくては、「ごまかしてるだけじゃん!」と言われても仕方ありません。
最後に冒頭の問題に戻ります。
Q.LGBTばかりになると足立区が滅ぶ?
Q.滅びません。
というか、それで滅びるなら既に他の出生率低下要因から足立区も滅んでいるだろうし、それを心配するくらいなら山積している出生率低下の問題解消が優先です。
LGBTの詳細についてはすでに大量の解説サイトがあるので、今回の記事では政治的観点からとらえてみました。
知らないではなく、まずは知ってからその中身の良し悪しを判断しましょう。
価格:1,760円 |