スーパークレイジー君の選管による当選無効決定から見る公選法の複雑性

今年1月の埼玉県戸田市議会選挙で当選した「スーパークレイジー君」。これまでも居住実態の有無で様々な報道がされてきましたが、ここにきて戸田市選挙管理員会がスーパークレイジー君の当選無効の決定を発表しました。

市議会議員選挙に出馬するには選挙の三ヶ月前までに立候補する選挙区に居住していることが条件ですが、スーパークレイジー君の様々な反論もその居住実態を証明することはできす、立候補の条件を満たさないとして選管による戸田市議会議員選挙の当選無効が決定しました。

では居住実態とはどのように示せばよいのでしょうか。
実はこれに対して明確な方法は示されておらず、居住実態を示すに値するであろう条件を複数並べ立て総合的に勘案する必要があります。
住民票の住所から電気やガスなどの光熱費、生活するうえで一般的に必要となる物品のレシートや周辺に住む方の証言などが主な調査方法となりますが、厳密には何を持って「居住実態あり」と判断するかは定まっていないために最終的な判断基準は選管に委ねられるのが実態です。

しかし、今回の報道では「住所の物件が友人名義だったこと」が大きく取り上げられていたため、住居を借りることができない「逮捕歴のある人が選挙に出づらくなる」という誤った情報が拡散されていますが、実際には名義の件は数ある要因の一つであり、仮に逮捕歴があって友人の家に住んでいても他の資料で居住実態を示すことができれば、また違った結果になっていたはずです。

これが公職選挙法の複雑なところであり、このような複雑な要素は何も居住実態の有無だけではありません。

例えば選挙中、明らかな公職選挙法違反が行われていても即座に取り締まることができないケースがしばしばあります。

例えば、選挙中はチラシを配るには「証紙」と呼ばれる選管から支給される限られた枚数の証明シールを貼ってあるものしか配布ができません。しかし、実際には証紙を貼っていないチラシが配られるケースもありますが、これを指摘したとしても大半の選管は即時対応しません。何故ならばその用紙が本当に候補者(候補者陣営含む)から配布されたかが証明できないからです。もしかしたら何かの手違いで第三者の手に渡ってしまったものが偶然対立候補の手元に回ってきただけの可能性もあるからです。そうであれば確認したとしても、チラシの「管理方法」に対しての口頭注意程度で話は終わってしまいます。

基本的に公職選挙法は主に「投票行動に結びつく行動」に対して制限を設けるものです。
河井前法相・案里元議員の当選祝いと称した収賄事件でも注目されたのが「その行動に集票の意図があったのか」といったポイントでした。

この一件については「どう見ても選挙の選挙における集票のためのお金だろう」と思う人も多かったと思います。ボクも思っていました。多分言ってる本人たちも無理があると思っていたと思います。

しかし胸の内は誰も見ることができないので、「これは集票のためではありません!お祝い金です!」と言い張ればそのお金が誰の目にも明らかに集票のためのお金であっても証明することはできません。その為、受け取った側の証言等の様々な証拠を揃えるための調査に時間がかかり、「誰の目にも明らかだけど集票行為と断言できない行為」が公式に集票行為として認められ、2020年6月東京地検に逮捕されました。

このように、明らかな違反行為も投票依頼に紐づかない可能性があるものでは様々な判断材料を勘案したうえで選管の対応となります。その為、実際に選挙が動き出してしまえば選挙期間の1~2週間なんてあっという間に過ぎてしまうので、選挙違反をした方がお得だね!と考える候補者が後を絶たないのもまた事実です。

公職選挙法は過去の判例に基づいて判断されることが多く、非常に複雑な法律です。しかし、その複雑さゆえに有権者が理解をしていないことをいいことに候補者が違反を行うことは一つの背徳行為でもあります。

今回はスーパークレイジー君の選管による当選無効決定から公職選挙法について触れましたが、ボク個人としてはスーパークレイジー君の活躍には期待していただけに残念な結果です。スーパークレイジー君には改めて政治の世界にチャレンジしていただき、ボクらが想像もできないようなワクワクする活躍をしていただくことを切に願っています。


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明ヶ戸亮太(あけど亮太):経営者×市議会議員
現在40歳:川越市議会議員(現在三期目)・広告会社代表取締役・ICTコンサルタント・FPのマルチタスク / JAPAN MENSA会員
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